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2005.11.12

ランド・オブ・プレンティ

ヴィム・ヴェンダース監督の最新作の映画『ランド・オブ・プレンティ』を観た。
アフリカとイスラエルで育ち生まれ故郷のアメリカに帰ってきた少女ラナと、ヴェトナム戦争の後遺症に苦しみながら一人アメリカを守ろうとする叔父ポールの物語。ポールは9.11をキッカケにヴェトナム戦争時代のトラウマが蘇り、その怒りと愛国主義的精神常からアラブ系の人々を監視している。
ランド・オブ・プレンティ
一種の"ロード・ムービー"と呼んだら良いのだろうか。(ヴィム・ヴェンダース監督の映画は、すべてがロード・ムービーとも言われるが)今のアメリカを象徴するポールと外の国にいたラナが、別々の思いでロサンゼルス~トロナ~NY"グランドゼロ"を旅する過程で、ポールは自分を取り戻していく。きっとアメリカ(ブッシュのことかな?)にも本来あるべき姿、国に戻って欲しいと思っているのだろう。完全なフィクションでありながら、現実のアメリカの病める姿を映し出しているようで、よく言われるこの大国の二面性(富める者と貧困)、9.11以降間違った方向へ向かっている今のアメリカを描き、警鐘を鳴らしている。ヴィム・ヴェンダース監督にしては、ストレートなメッセージを託した映画だと思った。

ランド・オブ・プレンティ主演のラナをミシェル・ウィリアムズが見事に演じている。彼女は、『アメリカ、家族のいる風景(DON'T COME KNOCKING)』のオーディションで知り合い、この作品はそんな彼女をイメージして書かれている。その為、役柄にピッタリはまっているし、時には幼く時には成熟して見える彼女は本当に印象的だ。これまで目立った映画には出演していないが、今後の出演作が楽しみだ。

『アメリカ、家族のいる風景』の製作が中断した時に、別の映画を撮ってみようとしてこの映画は誕生したそうだ。しかし、単なる思い付きで作られたのではない。母国ドイツから8年間住んだ今のアメリカを見直しているし、何より9.11が現実に起こったからこそ誕生した。このため、予定調和的に生まれた必然性が感じられる。16日間という異例の短期間の撮影も、その勢いが映像からも感じられ、この映画には必要だった事かもしれない。

この作品は必ずしも完成度が高いとは思えない。『パリ、テキサス』や『ベルリン・天使の詩』のような傑作ではないし、僕の大好きな『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』のような愛すべき作品でもない。しかし、必然から生まれたこの映画は、ヴィム・ヴェンダースにとって欠かせない作品であるに違いない。そういった意味で、この映画は一見の価値ある作品だ。
オフィシャルサイト

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「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

TBありがとうございました。
ほんと、そうですね!ヴェンダースの軌跡を
語る上ではなくてはならない作品になったと
思いますです。
また、これで次回作も楽しみになったと言うものです。
では、またお邪魔しますね♪

purple in satoさん、コメントありがとうございます。
ヴェンダースのアメリカへの愛を感じる作品でした。
暫く時間をおいて、また観直したいですね。
(DVDが出ることが丁度良いかな)
また、お待ちしています。

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