ヴィム&ドナータ ヴェンダース 写真展~尾道への旅
表参道ヒルズで開催中の『ヴィム&ドナータ ヴェンダース 写真展~尾道への旅』へ行った。
映画監督のヴィム・ヴェンダースが夫人のドナータと共に、敬愛する小津安二郎の代表作『東京物語』の舞台である尾道を訪ねる物語を写真に納めている。実際には、2005年10月26日から11月2日にかけて京都~鞆の浦~尾道~直島が撮影されている。入り口では写真にヴィム・ヴェンダースがナレーションをつけたプロモーションビデオが流されているロード・ムービーの監督らしい演出だ。
中に入るとまず、ドナータの写真が展示されている。彼女の写真はすべて30cm四方ほどの小さなモノクローム写真で、ライカで撮影された微妙な濃淡が現代に残る古い日本を映し出している。日本人の我々が見ても、非常に懐かしい風景だ。人物を中心とした写真だと聞いていたが、はっきりと分かるように人物が写されているわけではない。むしろ、その人が生活する空間を写し取っているようだ。一点一点は特に主張していないが、全体を通して日本への敬愛が感じられた。
その奥に、ヴィムの大きなカラー写真が展示されている。小さなものでも1m四方で大きなものは縦1.5mx横4m以上ある。映画監督らしく横長の巨大な写真はシネマスコープを思わせる一編の映画のようだった。ドナータとは違って、人物は一切写されていない。(一部風景としての人物はあったが)静止した風景だけが切り取られている。特に微妙な色彩が素晴らしく、構図そのものが主張しているというより全体としてその先にある物語を感じさせる写真だった。映画と違い写真は個人作業になるが、彼自身が素晴らしい映像作家であることを改めて感じさせてくれた。
出口近くのコーナーでは、この撮影旅行を納めた6分ほどのビデオムービーが上映されていた。彼自身が撮影した映像にナレーションを加えて、小津安二郎への敬愛の念を込めながら訪れた尾道への旅は、正に彼が捜し求めていた『東京物語』だったに違いない。勿論、そこには50数年を経た全く違う街があり、小津安二郎が見たそれとは全く違ってしまったが、残されたお寺や鉄道に映画に残る当時の面影を垣間見たようだ。しかし、それ以上に小津の愛した日本そのものを感じ取ることができただろうか。ヴィムはそれを言葉で語ることはなかったが、展示されている写真にその答えがあるのだろう。
開催期間が9日間と短期間で、会場も決して広くはなかったが有意義な内容でよかった。
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